相棒でも構わない

「あっ、やだ、かねさ、ぬいて、……んっ、ああ!」

ずんずんと後孔を穿つ肉楔に合わせて、ぱんぱんと肌がぶつかり合う音とぐちゅぐちゅと結合部が奏でる水音が淫らな旋律を作る。
いくら油を使って解されたといっても、国広の人の身は兼定のそれに比べて一回り以上小さい。だから、兼定の体躯に見合った立派な剛直を受け入れるにはかなり辛いものがあるのだ。

事実、先ほど国広の腹の中に肉槍が媚肉を掻き分け押し入ってきた時は、あまりの痛さに生理的な涙がぽろぽろと流れ出ては頬を濡らしていった。今だって、兼定が腰を引く一瞬だけは圧迫感から解放されるが、間髪入れずに貫かれる度に無理矢理こじ開けられるような引き攣った痛みを感じる。
悲鳴にも近い嬌声がでてしまうのは、腰の動きと一緒に兼定がその大きな手で国広自身を扱いているためだ。敏感な部分を程良い強さで擦られれば、快感が湧き出てくるのを抑えられようもない。
顕現したばかりのこの身には、兼定が与える刺激はあまりにも強すぎる。小さな身体はどのように受け止めればいいのかも分からず、容赦なく襲い来る快楽の渦に呑み込まれるばかりだ。

――どうして、こんなことになってしまったのだろう。

つい先刻、数百年ぶりの相棒との再会を喜んでいたばかりだというのに。あれは夢だったのではないかとすら思ってしまう。

***

堀川国広は、今日この本丸に顕現したばかりの新しい刀剣男士だ。国広を鍛刀した審神者と呼ばれる人間に名乗ったところ、驚いた表情を浮かべてここで待っているようにと指示を受けた。
新しい主と思われる人に命じられ、所在なく鍛刀された部屋で待っていると、パンと音を立てて勢いよく扉が開く。予期せぬ突然の大きな音に驚いた体は思わず縮こまってしまう。現れた人物が誰なのかを国広が確認するよりも先に、半ばぶつかるように大きな体にぐいと抱きしめられる。
ぐいぐいと筋肉に覆われた胸板に押しつけられるように力強く抱かれ、何事だと目をぱちくりさせている国広に、懐かしい声が降り注ぐ。

「国広っ、てめえ遅えんだよ!待ちくたびれたぞ!」
忘れるはずもない、凛と張った力強い声。国広の唯一無二の相棒、和泉守兼定。
自分を抱きしめているのが大切な本差だと知れば、国広の方も負けじと力をこめて彼の背に腕を回す。

箱館で別れてから、一体どれほどの年月が経ったのだろうか。彼の地で主の亡骸と共に静かに終焉を迎えた国広には、それを推し量ることは些か難しい。
ただ、すぐ後ろに立つ審神者の目も憚ることなく瞳から涙を零し嗚咽を漏らす兼定の姿を見るに、恐らく相当の時間が経っているに違いない。
彼を一人遺して逝ってしまったことに、今更ながら後悔の念が胸の内を支配していく。自分達はいつでも主の腰に並んで差されていたのだ、一人ぼっちになった彼の心情は察するに余りある。
こうして奇跡的に再び逢えたことに、この上ない嬉しさが込み上げてきた。

バタバタと足音が聞こえた方に目をやると、見知った顔が二人、驚きと喜びの混じった表情で国広を見つめている。会えてよかったねと嬉しそうに目を細める大和守と、かっこ良くて強い刀が形なしじゃんと兼定を揶揄う加州。
もう二度と会えないと思っていた彼らの顔に、頬が緩むのを止められそうにもなかった。

それから、三人に本丸と呼ばれる自分達の拠点を案内されながら状況を説明してもらった。今は西暦二二〇五年で、僕たちは歴史改変を目論む歴史修正主義者と呼ばれる者たちと戦うために、刀剣男士として現世に呼び出されたこと。
刀の時代が終わりを迎えた時を見届けた国広にとって、己が再び戦いで役に立つなどとは思ってもみなかったことだ。かつて銃や砲に及ばずに歯痒い思いをした分、此度は自分の意志を持って動き力の限り主に尽くそうと心の中で誓いを立てる。

ひとしきり本丸を回ったところで、部屋割りはどうしようかと加州に尋ねられる。余っているところがあればどこでも大丈夫だと返す前に、遮るように兼定が口をつく。
「国広はオレと同じ部屋でいいだろ。二人でも十分暮らせる広さなんだからよ」
「えー、そんなこと言って自分の世話させる気?」
「ちげえよ。これからまだ新入りも増えるだろうから、部屋は空けておくにこしたことねえだろ」
「ふーん……まあ、堀川がいいならそれでいいけど。どうする?部屋が余ってないわけじゃないから、一人部屋でもいいよ?」
「いえ、僕は兼さんと同じ部屋で大丈夫です。空いている部屋は、後から来る人たちに回してください」

自分はこうして縁のある刀がいるけれど、そうでない者がいきなり見知らぬ者と同室になるのは大変だろう。それならば、勝手知ったる相棒がいる国広が同室になった方が良いに決まっている。幸い、兼定もそれで良いと言っているわけだし。
少し気遣わしげな目で見つめられたが、了解、主にもそう伝えておくねと言い残して加州と大和守は廊下の先へと消えていった。

「んじゃあ、部屋に案内するから着いてこいよ。それが終わったら丁度夕飯の時間だから、食堂に行くぞ」
肩をとんとんと叩かれて、慌ててその背中に着いていく。案内された一室は十畳ほどの広さがあり、二人で暮らすには何の問題なさそうだ。兼定の私物が乱雑に置かれているのを見て、彼が確かにここで生活をしているのだという実感が湧いてきた。
これからどんな毎日が過ごせるのかと、その時は期待に胸を躍らせていた。それから数刻後に、その部屋で何が待ち受けているのかも知らずに――。

夕食は、かつての新撰組の屯所を思わせるような、賑やかなものだった。初めて食べる食事は、想像以上に国広の心を彩りで満たしてくれた。ただの刀であった頃に人間が嬉しそうにご飯を食べる姿を目にしていたが、自分が食べる側に回ることでやっとその意味を実感を持って理解できた。
ほかほかの白米も、ふっくらと焼かれた鰤の照り焼きも、本丸の裏の山で採れたという山菜の和物も。その全てが新鮮で、国広の舌を楽しませてくれた。
「美味しいよね。僕もここに来て初めてご飯を食べた時、もっと早くこの味を知りたかったって思ったもん」
目を輝かせて次々と口に運ぶ国広の姿を見て、大和守がうんうんと頷く。親しい者たちと食卓を囲み、たわいもない会話をしながら食事をすることがこんなにも楽しい時間だとは思ってもみなかった。

できることなら、一度だけでも前の主とこうして食事を楽しみたかったな、という欲が顔を出すが、物であった自分には過ぎた願いであろう。それに、今の主は毎食可能な限り自分達刀剣男士と一緒に食事をする時間を作っていると聞いた。
今日は別の机で刀剣男士と会話に花を咲かせているが、いずれは自分も主と席を共にする機会があるだろう。その時は、主と目一杯話すことができたらと思う。
まだ見ぬ未来に思いを馳せながら最後の一口までしっかりと味わって、ご馳走様を告げる。これから毎日この安らぎの時を過ごせると思えば、益々ここでの生活に親しみを感じられた。ご飯の後はお風呂だよと張り切った加州と大和守に手を引かれて、食堂を後にした。

入浴を終えて、火照った体を冷ますために厨房へと足を運び、水を喉奥に通していく。
初めての風呂に戸惑う国広のために、加州と大和守は一から体を洗う手順を丁寧に教えてくれた。その様子を兼定も満足げに見守り、最後は本丸が誇る大浴場に浸かって四人揃ってゆったりと体を癒した。
ぽかぽかと体の芯まで温まる感覚に、風呂とはなんと心地良いものなのかと頬が勝手に綻んでしまう。刀が湯に浸かる日が来るなど、考えもしなかった。人の体は不便もあれど、それに勝る素敵な日常で溢れている。
たっぷりと湯の温かさを堪能して風呂から上がると、体を拭いた後は『ドライヤー』なる機械で髪の毛を乾かすということを加州に教えてもらった。自分の知らぬ間に随分と文明も進歩したものだと驚きながら、あっという間に髪が乾いていく。
髪が短い国広はすぐに終えることができたが、腰よりも長い艶やかな黒髪を持つ兼定は些か大変そうだ。手伝うよと申し出てドライヤーを握れば、応と嬉しそうな笑顔で応えてくれた。
こんなに喜んでもらえるなら、これからできる限りは自分が乾かす役を果たしたい。そう心に決めて脱衣所を出ると、厨房へと向かった。

あまりここでゆっくりしていたら湯冷めしてしまうし、部屋に帰れず迷ってしまったのかと兼定が心配してしまうかもしれない。何より、早く寝たいと思っているかもしれない相棒をいつまでも待たせるわけにはいかない。
使ったコップを急いで洗って濯ぐと、足早に兼定の待つ部屋へと歩を進める。薄暗い明かりに灯されているところを見るに、まだ寝てはいないようだ。
とんとん、と叩いて入るよと告げた後に障子を開ける。胡座をかいて座っていた兼定は、国広の姿を認めるとすっと立ち上がる。
「遅くなっちゃったかな、待たせてごめんね」
「んなもん気にしなくていい。それより、ここはオレと国広の部屋なんだ。一々声をかける必要なんてねえ、遠慮なく入れよ」
「そうだね、次からはそうさせてもらうよ」
謝りながら、部屋の中を見渡す。少し散らかった兼定の私物は隅に寄せられ、今しがた兼定の座っていた場所には布団が敷かれている。

問題なのは、その数だ。敷かれているのは、一組。
いくら国広の体が小柄といっても、流石に狭いだろう。来たばかりでそこまで気が回らなかったが、他の部屋に余っている布団がないか探しに行くべきだ。
「兼さん、僕お布団が余ってないか他の部屋に探しに行ってみるね」
踵を返して部屋から出て行こうとする腕をぐっと引っ張られて、昼間のように抱きしめられる。一体どうしたのかと顔を上げると、囁くような国広だけに聞こえるほど小さな声が耳に届く。
「いらねえ。布団なんざ、一組あれば十分だろ」
「えっ……」
それじゃあ体をくっつけないと寝れないよと言うよりも早く、口を何かに塞がれる。国広の腰を抱いた右腕はそのままに、左手が頬に添えられる。

口付けを、されている。

前の主は大層な色男だったから、それが何を意味するかは分かっていた。だが、それが自分の身に起こるなど、想像もしなかった。
唇の感触を楽しむようにやわやわと食まれたかと思えば、吐息さえも奪うような深いものへと変わっていく。硬い胸板を押して離して欲しいと訴えるために口を僅かに開けば、すかさずぬるついたものが口内へと侵入してくる。
それが何かなど考えるまでもない、兼定の舌だ。口蓋をぬるぬると舐め回すような動きは、どこか蛇を彷彿とさせるようだ。驚きに抵抗するのを忘れてしまったのをいいことに、舌を絡められ味わうかのように啜られる。
じゅるじゅると唾液を吸われる音が耳を犯し、自分が何をされているのかをまざまざと突きつけられる。顔を動かして離そうとするが、顎を大きな手に掴まれ固定されて、ゆっくりと兼定の唾液が流し込まれてくる。
上手く呼吸ができずに助けて欲しいと目で訴えかけるが、それを飲み干すまでは許さないと言うように鋭い眼差しに射抜かれる。その瞳は真剣な色を浮かべ、決して引かないという強い意志を表している。
このままでは埒が明かないと思い、躊躇いながらもごくりごくりと喉に流し込んでいく。
その一部始終を見守っていた兼定は満足そうに口を曲げると、漸く唇を解放してくれた。酸素を求めた体がはあはあと必死に息を整える中、膝裏に手が当てがわれたかと思えば抱き上げられ、布団の上に横たえられる。

まだ酸素が行き渡らぬ頭をなんとか働かせて、寝間着の合わせ目を解く兼定の手を掴む。
「あ、はあっ……兼さん、何するの」
「決まってんだろ。今からお前を抱く」
「なっ……抱くって……僕たち、相棒だよ?そういう関係じゃ、ないのに」
「お前がどう思ってるかは知らねえがな、オレにとってはもう相棒だけじゃねえんだよ。三百年以上、国広のことを想っていた。……ずっとずっと、お前と会える日を待ち焦がれていた。今こうしてお前がオレの目の前にいる以上、触れるのを我慢することなんざできねえよ……」

艶気を含んだ低い声で話しながらも手の動きが休まることはなく、帯を解かれて前を完全に開かれる。暴かれた肌の感触を確かめるように、脇腹から胸へと掌が這っていく。
やがて胸の頂まで辿り着くと、片方を指の腹で押され、もう片方を摘まれる。ぴりりと痺れるような感覚に、思わず声が溢れる。
「ぁっ、兼さん、待って……なんか、変、だから」
「変なんかじゃねえよ。安心しろ、これからいっぱい可愛がってやるからな」
にっこりと笑う兼定の顔は、昼間のそれとは違い妖艶な色香を纏っていた。

***

そうして、今に至る。散々身体中を愛撫された国広が初めての絶頂を迎えた後に、兼定の性器が細い体を貫き、今なお貪るように腰を打ち付けられている。異物が暴れまわり、腹の中を押し拓かれるのを受け入れることしかできない。
解かれた帯で縛られた腕では大した抵抗も叶わず、開かれた身体の上からのし掛かるように陰茎を突き立てられるばかりだ。腰を浮かされた体勢のため、眼前には己の菊門が兼定の剛直を飲み込む淫らな光景が広がっている。
視覚からも犯されているような感覚に、忽ち羞恥心が沸き起こる。絶対に無理だと思っていたのに、こじ開けられるように中を拓かれ、国広の中も兼定の形を覚えるように柔らかくなっていく。
裂かれるような痛みが、徐々に快楽へと変わっていくのが恐ろしい。

自分の身体は一体どうなってしまうのか。考える余裕もなく、急速に性器へと熱が昇っていく。
「んぅ、かねさっ、だめ、きちゃう、また、きちゃうよぉっ……!」
「ああ、いいぜ、イっちまえよ……今度は、オレも一緒だからな……!」
そう言い終わるよりも先に、腰の動きと国広の性器を扱く指の動きが速くなる。上り詰めるのを促すような性急な責めに耐えかねて、国広の先端からびゅくびゅくと白濁が吐き出される。
達した衝撃にぎゅうと締まる胎内に、熱い迸りを感じる。じわじわと腹の中に広がっていく灼熱に、腹だけでなく意識までもが溶けてしまいそうだ。
ぜえぜえと息を吐く国広の頭を、兼定の大きな手が労わるように撫でる。漸く解放されるのだろうと安堵の息を漏らせば、腰を抱かれて兼定の膝の上に乗せられる。
腕を拘束していた帯を解かれ、力の入らない身体は自然と逞しい胸に寄りかかってしまう。宥めるように背を撫でる手が心地良くて、このまま眠りに落ちてしまえそうな気がした。

――そう思っていたのも束の間。

未だに国広の腹の中に埋められていた陰茎が、むくむくと硬度を取り戻していくのを感じた。慌てて身体を持ち上げようとする国広の腰を、兼定の両手が掴む。ただでさえ先ほどよりも深く咥え込んでいた体勢に、亀頭に押し付けるように腰を落とされる。
ずぶりと刺し貫くように深く穿たれ、勝手に身体が震え出す。回すように腰を動かされれば、痺れるような疼きが身体を駆け抜けた。
「ああっ、やだ、もう、やめてぇ……おねがい、兼さん……」
「駄目だ、まだ足りねえ。もっともっと、気持ちよくなろうぜ」

悪巧みを思いついた子供のようにニヤリと笑うと、掴まれた国広の腰が持ち上げられる。雁首が抜けてしまいそうになるまで持ち上げられたところで、一気に腰を下げられ先端が奥を叩きつける。あまりの衝撃に背中が弓なりにしなり、腰がガクガクと痙攣してしまう。
中に出された兼定の精液が滑りとなって、先ほどよりも抵抗なく剛直が内壁を蹂躙していく。抽送の最中、兼定の剛直がある一点を擦り上げた時、今までに感じたことのない強烈な快感が身体中を駆け巡った。堪らずに上がる嬌声に、獣のような獰猛な瞳が愉しそうに笑った。
「ああん、だめ、そこ、ダメぇ!おかしく、なっちゃ、ひあああァッ!!」
「ここが善いんだな?」
まるで宝物でも見つけたような表情を浮かべながら、何度も何度もその場所を張りあがった先端で刺激される。兼定を受け入れたばかりの時はあんなにも痛かったというのに、兼定の雄の形を教え込まされた肉襞は嘘みたいに快楽のみを享受する。

奥と浅い場所を隈なく抉られ、国広の腹の中で兼定の知らぬ場所などもうどこにもない。ちゅうちゅうと兼定の先端に吸い付くように蠢く胎内は、国広の意志などお構いなしに濃厚な精を浴びせられることを欲している。
腰を激しく打ちつけられる度に、蕩けるような愉悦が頭の中を満たしていく。広い海中に身一つで投げ出されてしまったかのような頼りない感覚に、思わず兼定の首に両腕を回して縋り付く。
「国広……国広の中、すげえ熱くて気持ち良いな……それに、オレの魔羅、嬉しそうにぎゅうぎゅう締め付けてきやがる」
「ああ、んああ、あああん!言わない、で……っ!」
「そりゃあ無理な相談だな。また締め付けが強くなったぜ?可愛いなぁ、国広……全部全部、オレのものだ」

煽るような口ぶりに、身体がさらに熱を持って兼定を一層強く締め付けるのを止められない。焦点が定まらず蕩けるような表情をした国広を貪るように、唇に噛みつかれる。吐息も、唾液も、全てを奪うような激しい口付け。されるがままに咥内を蹂躙され、口の中すらも法悦に浸ってしまう。
身体中で兼定を感じて、彼の存在を塗り込められていく。たとえ解放されたとしても、もう彼の存在なしには生きていけないかのように。

ただでさえ、現存していない上にその存在すらも疑われている国広は、他の刀剣に比べて曖昧な存在なのだ。こんな風に兼定の精を体内に吐き出されれば、その色に染まっていくことは容易い。
自分の身体が書き換えられて行く感覚に、本来ならばもっと違和感を覚えてもいいはずなのだ。それを感じず、それどころか絵の具を混ぜるようにすんなりと馴染んでいくのは、共に主の腰に差された縁からだろうか。

抽送の速度が、激しさを増していく。国広の肉壺は、ただただ兼定の剛直を穿たれ精を吐き出されるための性器になってしまったかのように、快楽だけを拾い上げて感じ取る。絶え間ない律動が、確実に二人を昂らせていく。
「国広、出すぞ……お前ん中に全部、出すからな……!」
「ひゃあ、――ああ、あああん!あっ、かねさ、かね、さん、中は、だめぇ……、んああ!」
これ以上兼定の欲望を注がれてしまえば、おかしくなってしまいそうだ。本能的にそう感じて懇願するも、意に介さないとばかりに強く奥を抉られる。

限界まで膨れ上がった兼定の陰茎に敏感な部分を擦られて、遂に耐えきれなくなった性器から熱が放たれる。兼定の腰の動きに合わせて、びゅる、びゅる、と押し出されるように迫り上がる精液が、国広と兼定の腹を汚していった。
絶頂と共に兼定の精を搾り取ろうと国広の内壁が収縮をして、その先端に口付けをするかのように吸い付く。奥に嵌め込まれるように埋まった先から、ぱしゃぱしゃと勢いよく兼定の子種が中を満たしていく。精液を浴びせられることすら今の国広にとっては快感を呼び、長い絶頂の奔流に意識が持っていかれる。
そのまま気絶しかけたものの、ゆっくりと兼定の陰茎が引き抜かれる感覚に、現実に引き戻される。咥えるものを失った後孔がひくついているのが見るまでもなく分かり、顔が熱を帯びていく。
それをこの上なく嬉しそうに見つめた兼定に、布団に押し倒されて優しく頭を撫でられる。

「国広の孔、ひくついてて堪らねえな……オレの精液垂らして、すげえやらしい」
「ん、言わないで、恥ずかしいから……」
「恥ずかしいことなんてねえよ、こうして体を繋げてたら当然のことだ。……初めてなのに、ちゃんと中だけでイケたな……やっぱり、オレとお前は相性抜群なんだろうな、嬉しいぜ」
赤らむ顔を隠そうとした腕を取られて、額に口付けを落とされる。あやすような口付けが、少しむず痒い。

「本当はもっと愛し合いてえんだが、あんまり最初から無理させると主に怒られちまうからよ……続きは明日の夜に、な?」
「……明日も、するの?」
「ああ。明日も明後日も……出陣や遠征でいない夜以外は、毎晩な。オレがこの数百年間、どれだけ国広のことを想ってきたのか、お前の身体に教えてやる」
「……兼さん、僕は……」

刀身の消滅と共に意識を失い、数百年ぶりに意志を持った国広には、兼定のことを未だ相棒としか見れない。だが、兼定を置いていき、その心をここまで傷つけてしまったのは他でもない自分だ。その罪を、償わなければいけない。
「余計なことは考えなくていい。お前がオレのことをまだ相棒としてしか見れないとしても、構わねえ。オレはお前を愛している。そして、絶対に惚れさせてみせる。だから、どうかこれからもオレに抱かれてくれねえか」
「……うん。兼さんが、それを望むなら。僕だって、兼さんのことが大切だから。まだ相棒として、だけど」
「ありがとな、国広。お前が側にいてくれるだけで、オレはしあわせだよ。これからは、一緒にいような」
「僕も、しあわせだよ。もう一度兼さんの隣に立つことができて。大好きだよ、兼さん」

そう告げると、初めて国広の方から兼定の身体を抱き締める。彼が不安を抱えることのないように、小さな身体で目一杯包み込む。
そんな国広の想いが伝わったのか、兼定は目を細めて微笑むと国広の抱擁を受け入れてくれた。

先ほどまでの妖艶な空気とは打って変わって流れる穏やかな時間を堪能しながら、二振はゆっくりと眠りに就いた。