「堀川のばーか!約束、守れなかったくせに……今更謝りに来ても、もう遅いんだよ」
先ほど出陣先から無事に本丸に帰還し、主が出迎えて労いの言葉をかけてくれた。お疲れ様。よく頑張ったね、ゆっくり休みなさい、と。そこまでは嬉しかったし、今回の出陣も俺たち六振揃って誰も欠けることなく帰陣できて良かったと思う。
けれど、主の後ろで申し訳なさそうにこちらを伺っている姿を目にして、出陣時に感じた悲しみと怒りがこみ上げてきてしまった。俺は普段は声を荒げたりすることなんて滅多にないし、喧嘩だって滅多に……いや、まあ安定とはちょこちょこ喧嘩するけど。少なくとも、堀川と特別な関係になってから今日に至るまで、喧嘩なんてしたことなかった。
だって、そんなの大人げないじゃん?安定とは、元々同じ主が使っていた刀ってこともあって、何かと対抗心を燃やしちゃうこともあるんだけどさ。堀川とはそんなことないし、あいつは見ての通り穏やかな性格だから、お小言を食らうことはあっても怒られたことなんて一度もなかった。俺も、もちろん堀川相手に怒ることなんてなかった。
けど、今回ばかりは話が違う。大事な約束を破られて、ごめんなさいの一言ではいそうですかで済ますほど、心穏やかになんていられない。眉を下げて申し訳なさを全開にした堀川の横をさっさと通り過ぎると、俺は着替えるために自室へと急いだ。
*
――数時間前。遡行軍との戦闘を終え、小休止をとっていた部隊。部隊長が見張りを買って出てくれたため、俺たちは各々体を休めていた。竹筒に入った水を飲んでいると、横に誰かの気配を感じた。
「よぉ、お疲れさん。なんか元気なさそうっていうか、ちょっと怒ってねえか?」
「お疲れー。……えっ、俺そんな顔に出てる?」
「他の奴らはどうか知らねえけど、俺はなんとなく分かったな」
「そっかー……いや、ごめん。気を遣わせちゃったね」
正直なところ、怒りをエネルギーに変えて戦っていた部分はあった。或いは、体の中で燃え盛る怒りを発散するために戦闘に専念していたともいえるかもしれない。でも、仲間に変化を気取られないように表面上は抑えていたつもりではあった。俺の隣に座る獅子王は、おじいちゃん子なだけあってそういう機微に聡いのだろう。
「気にすんなって。んで、何を怒ってんだ?」
「……約束。破られたから、怒ってんの」
「約束ぅ?誰とのだ?」
「……堀川」
「堀川?……あー、そっか。そういえばお前たち仲良いもんな。でも、堀川の奴が約束破るなんて珍しいな。何しちまったんだ?」
「さっき、出陣する時に見送り来なかったの」
「見送り?へえー、そんなことしてんのか。知らなかったぜ」
獅子王が知らないのも無理ない。俺と一緒に出陣したことなんて、片手で数えられる程度
しかなかっただろうから。それに、堀川が内番や遠征でいない時は見送りには来ない。流石に主から命じられた任務を優先するようにしている。残念ながら、今回は堀川にそういった仕事はなかったわけで、純粋に忘れられていたわけだけど。
――なんでだよ。約束したじゃんか。そう、あいつを責める気持ちが腹の奥から湧き出てくる。いちいち出陣の時に見送りなんて、他の刀たちからしたら普通じゃないってことくらい分かってる。でも、これは俺たちの中で交わした約束だから。俺たちが本丸に在る限り、ずっと続けていくものだと思っていたから。
俺は刀だった頃、死んだ。かつての主の手で振るわれる中で、刀身が折れた。そこから先の記憶はない。刀にとって、折れることはすなわち死ぬことと同じだ。この本丸に顕現されなければ、俺はずっと死んだままだっただろう。
けれど、なんの因果か再びこの世に呼び戻されたのだ。今度は、人間の体を持って。
俺が顕現した時、この本丸にはすでに長曽祢さん、和泉守、堀川、安定といった新選組で使われていた刀たちがいた。俺の姿を見て、待っていたぞと四振は嬉しそうに迎え入れてくれた。懐かしい顔ぶれに囲まれて、俺も嬉しかった。まさか、また彼らに会える日が来るなんて思ってもいなかったから。
それからしばらく、俺に出陣や遠征に参加する機会は与えられなかった。俺たちの本丸の主は、順番に刀剣男士を戦場に送り込んで鍛えている。だから、後から来た刀剣たちは、今育てている刀剣男士たちのレベルが上がるまでは本丸内で内番に勤しむことになっている。
主のやり方に文句をつけるつもりはない。むしろ、最終的には全員を鍛えるつもりでいるのだから、ありがたい話だ。でも、他の四振が出陣や遠征に出かける中、一人本丸で戦うことなく過ごす日々は少々退屈であり、寂しくもあった。俺も戦いたいなあ、刀は戦うのが仕事なのに、錆びちゃったりしないかな、なんて落ち込んだりしていた。
そんな俺を最も気にかけてくれたのは、意外にも堀川だった。もちろん相棒の世話を焼いている時もあるのだけど、俺が手持ち無沙汰でいるとさりげなく声をかけては、本丸の外に連れて行ってくれた。たまには外に出て買い物に行くのも楽しいよね、なんて俺の興味ありそうな店を紹介されて、心 を覆っていたモヤモヤを消してくれた。刀の時にはできなかった自分を着飾るってことを、人間の身を持ったからこそできることだよねと堀川は後押ししてくれた。
堀川とすっかり親しくなったある日、俺は何の気なしに言った。別に、深い意味なんてなかった。ちょっと愚痴っただけだ。
「はー……早く出陣したいなー。手合わせだけじゃ、腕が鈍りそうだよ。俺だって、沖田君みたいに剣の腕前で活躍したいな」
横に座っていた堀川は、黙り込んだままだ。いつもの堀川だったら、そうだね、なんて相槌を打ってくれそうなものなのに。調子でも悪いのかな、なんて思った時、真剣な眼差しがこちらを向いた。普段の穏やかな表情ではない、キリッとした目つき。何か変なことを言ってしまったかと口にする前に、堀川の方が口を開いた。
「清光くんは、怖くないの?戦うこと」
「えっ?何言ってんのさ、俺たち刀だよ?戦うことなんて当然だし、怖くないよ。……堀川は、怖いの?」
「……怖いよ。戦うこと自体が、じゃない。戦っているのに、大切な人を守れないのが怖いんだ」
堀川は、俺と違って元の主に最後まで付き従ったと聞いている。そして、その結果主が命を落とすところを見届けた。……堀川は、彼の命を守れなかったことを、今でも悔やんでいるんだろう。
「……気持ちは分かるけどさ、大丈夫だよ。俺たちはもうただの刀じゃない。今は自分の力で、敵を斬れる。頼もしい仲間もたくさんいる。だから、そんな心配することないよ」
「そう、だよね。……ごめん、変なこと言って」
「いいって。堀川は土方さんと最後まで一緒に戦ってたんだもん、そういう気持ちになっても仕方ないよ」
「……それだけじゃないよ」
「えっ?」
「清光くんが、折れた時。君は池田屋に出陣して、そのまま帰ってこなかった。……僕は、何もできなかった。最後に見た君がどんな顔をしていたのかも、思い出せない。悔しくて、悲しくて、堪らなかった。あの夜のことを、僕は一度だって忘れたことはない」
「堀川……」
堀川がそんな風に思ってくれていたなんて、思いもしなかった。そりゃあ、その時は衝撃を受けたかもしれない。でも、その後に新選組に降りかかった試練に比べれば、たかだか一振の刀が折れたことなんて、些細な問題だ。過酷な運命と戦ううちに、俺のことなど記憶の片隅に追いやられて、滅多に思い返すこともない。そんなものだろうと思っていた。
けれど今、俺を見つめる堀川の瞳は、そんな考えが間違いだったのだと伝えてくる。堀川は、加州清光のことを忘れはしなかった。ずっとずっと、俺が折れてしまった時に側で戦うことすらできなかった悔しさと悲しみを、覚えていたのだ。
俺の知らないところで、堀川は俺のことを想ってくれていた。そう思うと、胸がじんじんと温かくなっていくのを感じる。
「ねえ、清光くん。僕に、約束させてくれないかな」
「約束?」
「うん。清光くんのレベルが上がるまで、僕はきっと君と同じ部隊に入ることはできない。だから、清光くんが出陣する時が来たら、君のことを見送らせて欲しい。遠征とか内番のお仕事がない時は、必ず行くから。……だめかな?」
「いや、全然ダメじゃないけど……いいの?堀川だって、忙しい時もあるかもしれないのに」
「もちろん。万が一なんて起こらないと思いたいけど、戦場で命を落とす可能性はゼロじゃない。僕は、同じ過ちは犯したくないんだ」
浅葱色の瞳が、射抜くように見つめてくる。その言葉が、約束が、冗談なんかじゃなくて本気なんだって、物語っている。堀川なりの、精一杯の思いやりを感じる。人の身を持って、こうして思いを交わすのっていいな、なんて思いながら、俺は「わかった、約束ね。破ったら、承知しないよ?」と答えた。破るわけないよ、といつもの爽やかな笑顔に戻った堀川が、眩しかった。
その後しばらくして、俺たちは恋仲になった。堀川と約束を結んでから、俺たちはより一層顔を合わせて話すことが多くなった。堀川が俺にとって特別な存在なんだと気づき始めた矢先、向こうから告白されたのだ。恋仲になって欲しい、と。断る理由なんてなかった。
ようやく俺が出陣するようになってから、堀川は約束通り「いってらっしゃい、気をつけてね」と俺を送り出してくれた。本丸に帰還した時も、できる限りお迎えに来てくれた。そんな日常を送れることが、しあわせだった。
*
……なのに。破ったら承知しないって、言ったのに。なんで忘れるかなあ。ありえないでしょ。
戦装束を解いて自室で一息つきながらも、俺の心を占めるのは怒りと悲しみだけだった。
あの後獅子王に、「まあ、怒る気持ちもわかるけどよ。堀川も何か事情があったかもしれないんだし、ちゃんと二人で話し合えよ?」と助言を貰ったのに。裏切られたという感情が勝って、碌に話もせずに帰って来てしまった。
せめて出迎えに来てくれた堀川の言い分を聞くんだったな、と後悔の気持ちが芽生えた頃、自室の扉をトントンと叩く音が聞こえた。堀川だったらどうしようと思いつつも「どうぞ」と返事をする。ガラっと開いた襖から顔を出したのは、安定だった。
「出陣お疲れー。今、時間ある?付き合って欲しいんだけど」
安定が畏まってこんなこと頼んでくるなんて珍しい。でも、ちょうどいいかもしれない。用事に付き合ったお礼に、堀川とどう話したらいいか相談に乗ってもらおう。俺一人で悩むより、そっちの方がいい案が浮かぶかもしれない。
「いいよ」
「ありがと。じゃあ、着いてきて」
言われるがまま安定の背中を追う。廊下を何度か曲がって、共用で使うための少し広めの部屋の前にたどり着く。障子は閉まっているが、中から人の気配を感じた。
「清光、開けてよ」
「……なんで俺?なんか罠でも仕掛けてるんじゃないだろうなー?」
「なんで僕がそんな面倒臭いことしないといけないのさ。ほら、いいからいいから」
強引にぐいぐいと押されたので、仕方なく取っ手に手をかけて一気に開いた。途端に、パンパン、と高い音が聞こえてくる。銃声か、と一瞬身構えたが、飛んできたのは色とりどりの細長い紙切れだった。嬉しそうに笑っている長曽祢さんと和泉守が見える。その脇で、少し気まずそうにしている堀川も。
「驚いたか、清光?盛大に出迎えようってのはオレの案だが、どうよ?」
「……悔しいけど、ちょっとビックリした」
「ヘヘっ、そうだろ!」
「驚かせて済まないな、加州。お前のために設けた席だ、遠慮なく座ってくれ」
長曽祢さんに言われるがまま、座布団の上に座る。天井にはカラフルな飾り付けが施されていて、いつもの部屋に非日常的な彩りを与えている。壁には星や月など様々な可愛い形に切り取られた用紙が貼られ、華やかさと可愛らしさを演出している。この切り口がちょっと雑なのは、和泉守か、それとも安定か。逆に、定規のように真っ直ぐ綺麗に切られているのは、きっと堀川だろう。この時のために、みんなで作業してくれている様子が目に浮かぶ。
「改めて、お疲れ様、清光」
「ありがと……でも、これなんのお祝い?」
「あ、言い忘れてた」
「いや、そこ忘れちゃダメじゃん!」
「今言おうとしてたんだよ」
俺と安定が言い合っていると、慌てて長曽祢さんが間に入ってくる。いつもは大体堀川が仲裁に入るのに、今日は大人しく黙っているままだ。
「今日はな、加州。お前が初めて出陣してちょうど一年経った日なんだ。お前は出陣できるようになるまで長いこと待っていただろう?だから、こうしておれたち全員で祝おうということになったのだ」
「……そっか、もう一年も経ったんだね。時間が経つのは早いね、あんなに出陣するのを心待ちにしていたのが嘘みたいだ」
「オレたちと一緒に出陣する日も近いだろうよ。ほら、今日はお前のためにオレがとっておきの酒を用意したんだぜ?パーッといくぞ!」
和泉守が自信満々に高そうな一升瓶を手に、俺の器へと注いでくる。普段あまり酒を飲む方ではないが、今日ばかりはそうも言ってられない。俺のために用意してくれたんだからと思いながら、杯に入った透明な液体を一気に飲み干した。
夜も更けて、『清光出陣一周年記念のお祝い』はお開きとなった。ベロベロに酔っ払った和泉守を長曽祢さんが肩を貸しながら部屋へ連れていくのを見送った後、「後片付けは僕たちでやっておくから主役は先に休みなよ」と安定に声をかけられた。本当は、その向こうでせっせと飾り付けを剥がしている堀川と話がしたいのだけど。せっかくの好意を断るのも気が引けて、「分かった」と返事をして自室へと戻った。
このまま寝てしまおうかとも思ったけれど、そういえばみんなからお祝いのプレゼントをもらっていたんだということを思い出す。部屋に帰ってからのお楽しみな、とその場で包みを開ける事を許してもらえなかったので、順番に封を開けていく。
まずは、イヤリング。洒落た赤の差し色が入ったそれは、どうやら和泉守かららしい。「オレのセンスもなかなかのもんだろ?」と意外にも綺麗な字で綴られたメモが入っている。素直に褒めるのはちょっと悔しいけど、なかなかいいセンスしてる。ありがたく、使わせてもらおう。
次は、手合わせ用の竹刀だ。清光の本体とかなり似通っているそれは、ズシリと重く実践を意識した鍛錬にはもってこいだろう。「おれは小洒落たものはさっぱり分からんから、実用的なものを贈らせてもらう。ぜひ、これで鍛錬に励んで欲しい」と男らしい力強い文字で書かれた手紙が入っている。質実剛健な長曽祢さんらしい。ますます頑張らないとな、と思いながら竹刀袋に丁寧に包んだ。
その隣の小さな包みには、爪紅が入っていた。赤と水色の、二種類。「こないだ、お前が見てたやつ買っといた。後は、たまには違う色もいいかなと思って新選組の羽織の色も。気が向いたら使ってよ」と丸っこい字で書かれたメッセージカードが付いていた。俺が爪に色を塗っていると「いつもご苦労だねえ」なんて興味なさそうにしていた安定が、こんなプレゼントを贈ってくれるとは思わなかった。なんだかんだ俺の好きなものを選ぶあたり、さすがは腐れ縁という奴だ。俺も今度安定の好きなもの、買ってあげよう。
そして、最後。手のひらサイズの、浅葱色の包み。消去法で、堀川からのものだ。何が入っているんだろうとドキドキしながら包みを開けると、そこには意外なものが入っていた。
黒と赤の刺繍の施された、お守り。刺繍の模様は、明らかに清光の服装を意識した可愛らしいものだった。ひと目見ただけで、手作りなんだって理解した。堀川のことだから、てっきり和泉守や安定のようにアクセサリや爪紅、もしくは服とかをプレゼントすると思っていた。添えられたメッセージカードには、几帳面な字が並んでいた。
「僕の霊力を込めました。清光くんのことを、守れますように」
その言葉を見た瞬間、ポロポロと何かが自分の顔から落ちていった。畳に染みを作ったその正体は、もちろん涙に他ならない。
ああ、俺ってばかだな。こんなに愛されてるのに、堀川のこと一方的に責めちゃってさ。
もう、分かってる。今朝のお見送りを忘れていたのも、お祝いの準備に追われていたからに違いない。あの面子じゃ、飾り付けなんかの器用さを求められる仕事は、どうしたって堀川頼みになっちゃうから。でも、きっとすぐに思い出して、間に合わなくて、やってしまったと後悔したんだろう。出迎えにきた時の堀川は、とても申し訳なさそうにしていたから。
それなのに、理由さえ話すことすら許されずに無視されちゃって。でも、お祝いはお祝いだからって、一生懸命準備してくれたんだろうな。
ゴシゴシと涙を拭き、想いのこもったお守りを握りしめながら、立ち上がった。向かう先は、当然堀川の部屋だ。部屋にはまだ明かりがついていた。トントンと扉を叩いて「入るよ」と告げると、返事も待たずに開いた。
突然の訪問に驚いている堀川を見つめながら、すっとその真正面に座る。空のような、綺麗に澄んだ瞳。うん、やっぱり俺、堀川のことが好きだ。
「ごめん。勝手に怒って無視して」
「……ううん。僕の方こそごめんね。大事な約束、忘れてて。僕の方が約束したのに」
「いいよ。今日の準備してくれてたんでしょ?ありがと、これ、すごく嬉しかった」
言いながら、先ほどのお守りを堀川に見せる。少し気恥ずかしそうにしながら、堀川は頭を掻いた。
「最初は、アクセサリとかにしようと思ったんだけどね。前に主さんにね、自分の霊力を定期的に一つのものに込めると、その持ち主をどんな攻撃からも一度だけ守れるようになるんだって教えてもらって。これだ、って思ったんだ」
「そうだったんだ。これ、堀川の刀の欠片でしょ?」
「うん。霊力を込めるのは自分の使い慣れたものじゃないといけないらしいから」
「……そっか。へへ。なんか、堀川に守られてるみたいで嬉しいな。俺って、愛されてるね」
「……当然だよ。僕は、清光くんのことが大好きだから」
ふわりと下がる眉尻に、弧を描く唇。俺にしか見せない、ちょっと情けなくも嬉しそうな、笑顔。今日もまた、この笑顔を見ることができた。そんな何でもないことが、きっと何よりのしあわせなんだと思う。
「……ねえ、堀川」
「なぁに?」
「ただいま」
「……おかえり、清光くん」
そう言い終わる前に、温かい腕が俺をぎゅっと包み込んだ。